9月19日(土) オシュ 曇り
昨日の夕方もそうであったが、今朝も部屋をノックする人がある。掃除人夫かとも思うが、扉に覗き窓がないので誰が来ているのか分からない。ジェジュールナヤがいるにも関わらず、外部から誰も彼もが自由に出入りができている。あるいはこれを以てロンプラでは「セキュリティに問題がある」としているのかもしれないが。いずれにせよノックは無視する。
意外にも寒くはなく、長袖1枚で十分である。
今日は、明日の日曜バザールを控えての「休養日」の位置づけである。午前中は部屋でノンビリ過ごす。
【ソロモンの王冠】
午後はオシュの目印「ソロモンの王冠」なる岩山へ登りに行く。なんでもここは予言者マホメット(ムハンマド)が祈りを捧げた場所だとか、インド・ムガール帝国の始祖バーブルゆかりの地であるとかで、要するに地元の人にとってはたいへんありがたい聖地なのだ。それで、30分ほどかけて岩山を登ると、15世紀のフェルガナ王にしてムガール帝国の始祖ザヒルディン・バーブルが造った小モスクがある。本当に小さくて、入り口は高さ1mほどしかなく、人1人がやっと入れるほどのものであるが、見物客は多く、みな次々と入っていく。彼はここで神託を受け、インドへ進出したとかなんとか。聖地つまり巡礼地の1つなのだが、それほど厳かな地ではなく、むしろ観光地である。その聖地なる岩山の、どてっ腹をくりぬいて造った、ソビエト連邦建設の博物館があるのが実に珍妙だ。そして山全体には順路がそれなりに整備されていて、危ない道にはコンクリート補強がされているし、手すりもある。登ってきた道と違う方へ降りていく途中に洞窟のようなところがあり、ここにムスリム僧のような御仁がいて、お客さんも祈りを捧げていく。これこそが聖地なのかな?
この「王冠」からオシュの町が一望できる。オシュの町は白い。家屋の屋根が白いのだ。
岩山を降り、町を散歩する。ジプシーのような子ども達に「金くれー」とせびられる。
この町にはレーニン像が健在である。
今日は土曜日のせいか、結婚カップルをいくつも見る。
食事は昨日に続けてタバカ。タバカは簡易(圧縮)フライドチキンなのだが、キルギスではなぜかこれが妙にうまいような気がする。トリはうまい。
宿に戻ると、ホテル内にサモサ売りが徘徊していることが判明した。ノックは彼らがやっているのだろうが、きっとサモサ売りでないのもいるのだろう。売れるのかな。
【ビールが酸っぱい】
ホテルの前に屋外カフェがあるが、そこではおっさん共が生ビールを飲んでいる。それもジョッキで、さもうまそうに飲んでいる。我々もそれにつられ、500mlばかり入る大ジョッキで2つ頼む。1ヶ5スムとは30円にもならない飲み物だが、のどが渇いているときにはさぞかしうまいに違いない。と思って裕子と乾杯し、グイッと飲む。と、
「すっぱい!」
なんじゃこりゃ。これはクヴァスのようだ。発酵が不十分なのでこうなるのだろうか。この味は、炭酸黒酢健康飲料といった具合である。裕子は半分飲むのが精一杯であった。考えてみると、カザフやキルギスの国産ビールには、けっこう酸味がある。それを考えると、こんなものなのかな、と思う。周りのおじさん達はうまそうにがぶがぶと飲んでいる。
【都会と田舎】
こんな田舎町でもキルギス第2の都市である。田舎はノンビリして良いが、半面、裕子の指摘するように「我々は感動が薄れている」ことは紛れもない事実である。「飽きが来ている」というべきか。中国新疆以来、同じ文化圏にいるのだ。同じような服装、同じような食文化、同じような顔立ち、同じような・・・。「キルギスタンとはどんなところだろう」と思ってやって来た。まだ日本でも知られていない。ガイドもろくにない。ニュースでも報道されることが稀な国だ。たしかに面白い。しかし、観光旅行として「面白い」かというと、少し考えなければならない。一言でいえば、観光インフラができていないのだ。だからこそ面白いのだけれど、旅行者とは、観光地にいるのが本来の姿なのではないかという気がしてくる。たまにはノンビリしないと疲れるが、ノンビリしていると落ち着かない。早く次へ行きたい。このままフェルガナ盆地からウズベキスタンに入りたいところだが、ビザがない。ビザ取りのためにもう一度ビシュケク経由でアルマトイに戻るのがもどかしい。ビザさえあれば・・・と思うが、これは自分で作った旅程なのだから自分で始末をつけねばならない。
ここ2,3日、鼻の調子が悪い。先日コニャックを飲みすぎて喉を痛めたが、その影響かもしれない。
【キルギスタンで見たもの】
Sony Play Station(町の公園でTVを設置し、屋外ゲーセンと化している)
セーラームーンのカバン(明らかに模倣品と思われるものが多い)
P&G、コカコーラ、ホイットニー・ヒューストン
マクドナルドは無い。