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922日(火) アルスランバブ 晴れ

 よく晴れている。

先日から喉の調子が悪かったが、昨日のコーラのせいで喉の痛みがひどくなった。

朝もチャイハネで茶をもらい、ナンを食べ、バス停までの下り坂を歩く。バスの時間を知らないが、昨日バスを降りたところにいれば何とかなるだろうと思っていた。そしてそこは、呑気にたむろするウズベクじいさんの憩いの場所になっていた。横にいたジイサンとお話をしたり、ジイサン方の写真を撮ったりするが、バスは一向にやってこない。するとあるジイサンが、「バスはここに来ないぞ。もっと下だ」と言う。優しいジイサンである。いやー、田舎ではこういう人とのふれあいが大事だよなあ、と思って、彼にほいほいと付いていったらバスが待っていた。ジイサンが「ほら、あれだ」と指さす。「ありがとう」と言って別れようとすると、ジイサン「おい、これ」と、親指と人差し指をすりあわせて「小遣い」をせびる。なんと、彼はこのために案内をしてくれたのか。だから道すがら「子どもが病気で」だの「暮らしが大変」だの話していたのだろうか。彼への怒りよりも、自分たちが呑気であったことがおかしく思われ、僕は笑って無造作にポケットから握りだした3スムを彼に与える。ジイサンは「えー、これだけなの」と言う顔をするが、僕は妥協せず「さいなら」と別れた。まいった。

 

 アルスランバブを10:10に発し、12:10にバザールクルガンへ。途中、羊や牛の渋滞に巻き込まれる。このような風景もすっかり慣れっこになってしまい、もはや感動が薄らいでいることが自分でも認識できる。バザールクルガンでの乗り継ぎは良く、12:20に発し、ジャラルアバッドに13:20に到着。ジャラルアバッドも暑い。朝から出ていた鼻水は多少おさまったようだが、喉が痛い。体調が悪いのだろうか。バスに乗っても考え事ばかりしているし、荷物も重く感じられる。「疲れているんじゃないの? 機嫌も悪いもの」。ユウコの言葉は僕を驚かせた。自分の機嫌が悪いことすら気づかないでいるのは重傷だ。

 

 ジャラルアバッドから夕方に出るはずの乗り合いタクシーに乗るべく、この街で時間をつぶす。ホテル・ジャラルアバッドの前庭にあるオープンカフェでビールを飲む。良い天気だ。横のテーブルには10人ほどの学生らしい地元の若者が、1人の年輩女性を囲んで小パーティをひらいていた。年輩女性は英語の先生のようである。横では学校帰りの子どもが我々の荷物を指さし、ニヤニヤと内緒話をしている。「でけぇー、この荷物。俺でも持てるかな」とでも言っているようなので、試しに背負わせてみた。喜ぶ笑顔が無邪気で、ホッとさせる。

 

 夕方4時頃、レストランに入りラグメンを食べる。中途半端な時間だがお客はちらほらとあり、オヤジと小娘によるカラオケショーもある。しかしオヤジのシンセサイザーはお世辞にも上手とは言えず、小娘は良い声をしているがやる気はなく、どうも夜の本番ライブのための練習のようにも見える。何曲か歌うと、「もうイヤ」というような顔をして、中央の円卓の人々のところへ行き、椅子に腰掛けおしゃべりをはじめた。家族なのか親類なのか、彼女はヤケにチヤホヤされている。

 

 ロンプラによれば、ビシュケク行きの乗り合いタクシーは街のメイン街道に面したバスターミナルの脇から出るとのことで、そこで2人して待つ。ちょうど街道が線路をまたぐ辺りだ。街道を挟んだ反対側には市場がある。1時間半も立ちつくしたが車は来ない。行き交うバスに長距離はないのかと目を懲らすが、ない。小さい片田舎のバスターミナルであるが、ここで人に聞いてみると、ビシュケク行きのタクシーはここからではなく、「道の反対側にある市場の駐車場がタクシー溜まりになっているからそこに行くと良い」と言われる。その駐車場は、今いる場所からは見えないのだが、市場に入っていくと線路脇に空き地というのか駐車場というのか、とにかく車が何台も停まれる空間があって、そこにいかにもタクシーのオヤジという男達がたむろしている。近づくとこちらから声をかける間もなく「ビシュケクか?」と聞いてきた。オシュから少し近づいた分、ビシュケク−オシュ間よりも若干安い。1人のオヤジの案内で乗用車に乗り込んだ。そこには既に2人の女性客がいて、運転手とあわせて総勢5人。すぐに発車した。時刻は7時を回ったところである。

 女性2人は運転手の知り合いらしい。僕が助手席に乗り、ユウコを含めた女性3人がうしろに座る。運転手のオヤジは中心から少し離れたアパート団地で車を停め、車から降りた。どうやら自宅に寄っているらしい。5分ほどで1人の少年と戻ってきた。少年は中学生ぐらいに見えたが、車を動かして間もなく「あれは年上の息子でね」とロシア語で教えてくれた。こういうときに気を利かせて「息子は何歳ですか?」「子どもは何人いますか?」などと聞いてみれば良いのだが、一瞬とまどってしまうために機会を逸し、頭の中で質問を整理した時点ではもう遅い。車は既に街道の一本道に出ていた。

 

 ジャラルアバッドからタシュキョミョルという街の間に検問がある。オシュ−ジャラルアバッド間でも見た、ウズベクとの国境である。街道は、国境にかまわずまっすぐに作られている。いや、国境のほうが、街道にかまわずわざわざグニャグニャに引かれたと表現するべきであろうか。とにかく、一本道の主要道路に検問があるわけだ。我々は未だウズベキスタンのビザを持っていない手前、オシュからバスでジャラルアバッドまで来たときと同様に冷や冷やするが、検問で要らぬ頓着を起こしたくないのはタクシーの運転手も同じらしく、検問のゲートの直前で右の脇道にそれ、ほぼ直角に曲がった。そして、眼前にそびえる山に向かって、ダーッと登りはじめる。ビシュケクからオシュに来るときに検問に気がつかなかったのは、こうやって「国境を越えない回り道ルート」を延々走ってきたからなのだ。この道も車幅は十分にあるため、傾斜はきついが車はかまわずビュンビュン飛ばす。舗装されていないので、ほこりっぽい道である。

 ガンガン飛ばして夜11時に夕食。切り立つ山に囲まれた街道の食堂であるが、ここはあのナイスガイが運転するジープでオシュに行くときに朝飯を食べた店である。つまり、アタベク氏とドルジバ(友好)の杯を交わしたところだ。オヤジは運転手のため酒を飲めないから、今回は僕に酒を勧める人はいない。シャシリクを食べる。羊だが、おいしい。ユウコも食べた。