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8月23日(日)カシュガル到着

 

 カシュガルでの宿探しにあたり、我々は汽車站に近い天南賓館から見ていくつもりであった。ほかにも手頃な宿は街中にあるのだが、それぞれが離れているので探し歩くのは骨が折れる。とりあえず難がなければ、汽車站の向かいに位置する天南賓館に滞在するつもりである。

 ところがカリムさんが我々を気遣い、「ホテルの予約をしていないなら一緒に色満賓館に行かないか。快適だし、安いよ」と誘ってくれる。彼はすでにロバ車を確保し、荷物を積み込んでいた。彼と共に行くのも一案ではあるが、「もしかしたら、ドミトリーに泊まるんじゃないかなあ」との懸念がよぎる。僕は良いが、それでもやはり2人部屋のほうがなにかと気楽だ。彼に付いていった上で「僕らは標準間に泊まります」とは切り出し難い。それに、手元の「歩き方」によれば、色満賓館のドミは安いが標準間は300元以上もする。あいにくだが、カリムさんには「天南賓館では友人が待っているので」と言って別れた。

 

天南賓館にチェックイン。料金表にはつたない英語の表記もある。

 すぐバザールへ急ぐ。昼を過ぎ、だいぶ引けているとはいえ、まだまだ盛況である。我々は夜通しの移動で疲れているが、あちらこちらと歩き回る。

圧倒的なのは女性の服装の華美なことだ。

 

ピンク! どピンク! 赤!

 

また、新疆名物の矢絣風の模様も良い。帽子もいかしている。男女ともかぶるウイグル人帽子は −ウズベク人帽子と同じく− つばのない、四角い帽子である。ただし、男性の帽子は濃緑色などの地味なものが多い(ちなみにウズベク人男性の帽子は黒)。女性のはいろいろ色彩があって可愛い。しかし、女性たちの服装もそうだが、女性向けの生地屋の色も「どピンク」「ど赤」で、それが露店で何軒も並んでいると周りがみんなピンクになってしまい、なんだかいかがわしい店にでも入っているような錯覚に陥る。

 香辛料の店も多い。これまた色彩が豊富である。それと干果屋。この2種の店の売り子には、簡単な英語や日本語を話す輩もいるので、少々興をそぐが、とくに香辛料は味覚や嗅覚だけでなく、視覚にも刺激的である。

 

 動物市はピークを過ぎたようだが、それでもロバや羊などがひしめいていた。ほかにも、野菜や衣服や肉や日用品、なんでもあった。

ヨーグルトドリンクの立ち売りがある。大きなどんぶりから柄杓でコップに注いで売っている。それを見るとノドが渇いてきた。しかし、あれを飲むのには優希が必要である。何が起こるか分かったものではない。

 回り尽くしてもきりがないが、いい加減疲れてきたので休みたい。しかし、休もうとなると手頃なところがない。「なにか簡単に食べようか」と考えるが、食堂はいっぱいあるけれども雰囲気だけで圧倒されてしまうし(人の活気と、羊料理の臭気)、第一、全般に衛生面に不安が残る。「不安」というより「恐怖」である。こんなときに喫茶店でもあると助かるのだが、そんなものはない。と、路上のジューススタンドを発見し、冷蔵庫で売られている缶ジュースを買ってひと休みすることにした。この露店にはテレビがあり、横には粗末ながら観賞用のベンチがある。売り子のオヤジが愛想良く「座っていいよ」と手で合図する。ほかにも数人の客がいたが、みなテレビに夢中である。我々は疲れて見る気にもなれず、ジュースを一口飲んでぼんやりと辺りを眺める。

ふと、テレビから出てくる音声に違和感を覚えた。中国語ではないらしい。外国語のドラマのようだ。ユウコが言う。「ねえ、なんだかさっきから『カオリ』って言ってない?」。テレビを視る。「そういえば、なんだか日本のドラマのように見えるね。白黒だから、よく分からないけど」。僕が応えると、ユウコはさらに、「さっきから出てくるこの女の子、沢口靖子に似てるよね」。ふーむ、僕もだんだん目が本気になってくる。「古いドラマだね。どうやら、こっちの男は『ユーゾー』らしいね・・・!」。ここでユウコと目があった。「あ!」。

「『澪つくし』だ!!」。

「だから『カオリ』と『ユーゾー』なのか!」。

ダリ君の奇声の謎が、いま解けた。ユウコを見て「カオリ、カオリ」とはしゃいでいたのは、このテレビの影響に違いない。

 

 それにしても、ウイグル人の女性の服装は色彩も派手だし、出で立ちが華美だ。気合いを入れて余所行きの服を着てバザールに臨んでいるのではなかろうか、と思うが、学校帰りの女の子たちの服も綺麗で驚かされる。その派手な子どもたちに、ユウコはじろじろ見られることが多い。スカートをはいていないせいだろうか。ここの女は、ワンピースの下にモンペのようなズボンをはいているから、Tシャツにジーンズひとつの彼女の格好が珍しいのかもしれない。さらに、少年どもは我々を見て指眼鏡をする。2人してメガネだから珍しいのであろう。しかし、彼らの態度には嫌みがなく、かわいい。

 

 汽車站に近いせいか、天南賓館の前の通りには飯屋が多い。めずらしく鳥の丸焼きを出す店があったので頼んでみる。少々焼きすぎの感はあったが、味は良い。が、量のわりには高かった。羊や牛より見る機会が少ない鶏は希少な高級品なのだろうか。

 

 カシュガルは良い。すっかり気に入った。