228日(日) 北京 晴れ

 

【八達嶺行き一日ツアー】

 8時起床。

今日は万里の長城、八達嶺を見に行く。バスは前門の前にあるバス停から「游1路」が出ていることはあらかじめチェックしておいた。

それで今朝行ってみると、じつはこれが国営の一日ツアーバスで、八達嶺のほか、十三陵(明の歴代皇帝の陵墓)にも行くらしい。帰りは夕方5時過ぎになると言う。

 

我々は、長城を見物した後、午後は胡同(昔ながらの路地)をぶらぶら散策し、四合院などの下町情緒を見物するつもりでいた。

たしかに、ここへ来る前、ユウコが「游1路って、ツアーバスじゃないのかな」と気にしてはいたのである。

「游」は旅游に通ずる。僕が甘かった。「八達嶺に行くのは、徳勝門から919路バス、あるいは西直路駅から877次列車で行くと良い」とは「歩き方」のガイドだが、どちらも乗り場が宿から遠く、この前門を通りがかった際に「游1路」を見つけ、「こりゃあ、乗り場が近いし、便利だ」と、良い気分になっていたのである。

 

 自分の甘さにイライラしてきたが、今から徳勝門に行くのは時間の浪費だ。ユウコは客引きのオバチャンから説明を受けている。

「どうする? 乗る?」ユウコが僕に聞いた。

「乗るしかないよなあ」と思い、

「で、いくらなの?」と答えた瞬間、自分がひどくぶっきらぼうな答え方をしたということに気づいた。

ユウコがすっかり不機嫌になってしまった。「今から徳勝門に行っても時間を食うからやめよう。余計なところも回るけど、これで行こうよ」と、説明すれば良かったのだ。ごめんなさい。

 

 大型バスに乗ったのは中国人ばかりだが、日本人も混じっているような気がする。ミニバス同様、満席になるまでバスを出さない。けっきょく10時に出発した。

 

 八達嶺高速に乗って、北へ70km11時半に麓の長城入り口に到着。

おおー、万里の長城だ!

北京で万里の長城を見物するには、八達嶺のほか、慕田峪、司馬台もあるのだが、観光見物としては八達嶺がもっともメジャーで、マイナーな長城も味はあるのだろうが、いまの我々は観光気分を満喫したいので、八達嶺を選んだ。

長城を歩く。

夏山登山さながら、尾根の長城を行列が続く。老いも若いも、えっちらおっちらと長城を登り、下る。

けっこうたいへんだ。

修復がしっかりなされた長城は、歩けるところだけでもそうとうな距離になるが、我々は雰囲気だけ分かればいいので、深入りはしない。

それにしても、この長城が遥か西域、我々も敦煌へのバスの途上、かつて車窓から見た嘉峪関まで続いているのかと思うと感慨深い。

 

 ふもとのメシ屋では、115元の定食が、ツアーバス割引で13元になった。

14時前に出発。2人して深い眠りにつき、14時半に長陵(明 第3代成祖 朱棣 永楽帝)を見物。

15時半発、1545分に定陵(第13代神宗 万歴帝)、1715分発。

長陵の陵墓は大きく、祭祀を行う「禝恩殿」と、陵墓の標識的な建物「明楼」、および「地下宮」から成る。長陵には、立派な禝恩殿があるものの、地下宮はまだ手が付けられていない。いっぽう、定陵には、禝恩殿はないものの、地下宮の前に建つ明楼は立派である。地下宮とはいえ、つまるところお墓であり、これはけっこう「がっかり」の部類に入る。

1820分に前門に戻ってきた。

 

 我々はそのまま梨園劇場へ直行し、2階席のチケットを購入した。

梨園劇場は前門飯店の一部と化している。このホテルの横に「日式中国料理」と看板を下げた食堂があり、ラーメンが食べたいので入ってみると、店内の壁には日本語のメニューもある。

客はいない。仕事は遅く、そして味は薄い。

「みそラーメンというのは、もっと濃いのではなかったか?」「我々の舌は、中国仕様になってしまったのか?」と疑問に思いながら、テーブルにあった醤油と酢をドバッと入れたら、変な味になってしまった。昼飯に出てきたおかずはシシトウ入りで、けっこう辛かったのだが、中国にいる以上、これぐらいないと物足りない。ヨーロッパから先、辛い料理に飢えていたのではないかと思う。辛味が、美味く感じられるのだ。いや、このラーメンは、薄いよ。

 

 今日の京劇は19時半開演、2045分までであった。

梨園劇場は、まさに大ホールで、1階を見下ろすと、ステージ正面の前半部は卓席になっている。我々は2階の一番前に座った。ステージから少々遠いが、全体を見渡すことができる。

今日の演題は2つ。第一話は人情話、というか「覇王別姫」なのだが、これが有名な「虞や虞や、汝を如何せん」であったとは、あとからユウコの講釈によって知った。

無知であっても、姫の優雅な舞いや、オペラのような語り調子など、充分に楽しめる。おまけにこのホールには、英中の電光字幕が出るので分かりよい。

第二話は「虹橋贈珠」。これは、前半はきらびやかな服飾と女性の美声、後半は大アクロバット活劇である。ステージが広いので、大胆かつ大人数の立ち回りが良かった。

アクロバットの中心役は、昨日の「盗仙草」同様、女性なのだが、バトン蹴りをはじめ、全般に昨日の人の方が上手だった。

 

 梨園劇場は大ホール、湖広会館は小ホール。私だったら、湖広会館の2番目に高い席(卓席、前から3番目ぐらい)を薦めたい。

 

でも、頑張って両方見に来て、良かった!

今日も御機嫌で、帰りがてらトリのモモ焼きとビールを買って帰る。

ビールで思い出した。ビールは5元もあればお釣りが出るのに、今日、定陵で見かけた日本人3人連れ(おそらく学生)は「あ、5元見つけ」「うわ、使えねー」と言っていた。北京では日本人旅行者を多く見るが(故宮にも日本語表記がある)、どうも若者はイケスカナイのが多い。東安市場でも見かけたが、ファッションが、なんとなく浮いているというか、まあ我々も若くないということかしら

 北京はまだまだ見どころが多く、1週間いても見飽きないと思うが、少し残念なぐらいが却っていいのかもしれない。明日は移動日。雲南省昆明に向かう。いよいよ最終ラウンドに近づいてきた感がある。

 万里の長城は、とくに周辺にゴミが多い。ビニール袋が散乱している。ゴミ拾いのオジサンもいるのだが、中国はいずれゴミの国となってしまうのではないだろうか。

 北京にはイトーヨーカドー、そごう、ロッテリア、8番ラーメンがある。