3月9日(火)景洪 晴れ
【橄欖壩と西双版納】
8時起床。朝は涼しく、半袖では寒い。
室内の方がむしろ湿度が高い。窓を閉めて寝たために、洗濯物の乾きが悪い。
ホテルのレストランで朝食。面を食べた。
10時前、客運站に赴き、ガンランバ行きの8人乗りミニバスに乗る。
「ガンランバ(橄欖壩)に行かなければ、シーサンパンナに行ったことにならない」という。
中国では「孔雀尾羽」と褒め讃えられる、南国情緒の景勝地である。景洪からはメコン川沿いを走り、景色はよい。
とちゅう、川渡しのゴンドラリフト(2人乗り)があった。生活で使うにしては危なっかしいが、しかしそうなのだろう。
30分ほどでガンランバに着いた。ここのバザールの賑わいも有名らしいのだが、11時前とあっては既に終わりに近い。
それはともかく、バザールから民家、人々、川、寺などを見物した。
みやげ屋も活気がなく、旅游バスも停まっているが、シーズンオフというか、営業終了というか、そんなかんじだ。ミニバスを降りたときにはリキシャの客引きが寄ってきたが、それ以上のものはなく、午後1時前にバスを拾って、1時半には景洪に戻ってきた。
ガンランバの途上では、メコン川の対岸に民家がいくつか見えたが、家の形がやはりそれぞれ違う。民族が違うのだろう。
そして、今日はタイ仏教の寺を3つ見た。ガンランバの中(川のそば)、村はずれ、曼听公園の中。
どれも内装は同じである。天井からの飾りがちょっと違う。仏はハリボテである。
内壁には、釈迦およびエライお坊さんの一生みたいな続き絵があるのだが、これがどうにも、スチャヴァの僧院の絵(キリストやエライ聖人の生涯)とよく似ており、印象が重なる。
それぞれが独立して作られたものなら、人間の思考はどこでも同じなのかと、それは別の意味で感動だが、まあどちらから影響を与えているのだろう。
はたして、どちらが先なのか。
しかし我ながら不思議に思うのは、
「マリア様の絵を通して点を祈るのです。マリア様の絵そのものを拝んでいるのではありません」
と言われると、
「えーっ?」
と、顔をしかめてしまうものだが、今ここでハリボテの大仏を目の前にして手を合わせるとき、我々は決してハリボテ様に拝んでいるのではないことに気づく。
その向こうの何かに対して手を合わせているのだ。
「この違いはなんなのだろう」とユウコと話す。
キリストは、あとから作られている話が多く、そして彼はそもそも人間なのに、神格化(たとえば三位一体)されており、キリストだから良いものの、現代宗教であればとても認められるモノではない。誤解を恐れずに書けば、ウソくさいのだ。そして実際、ウソ(というか神格化のための作り話、ある意味ではまさに「神話」)が多いのではなかろうか。
いっぽうシャカムニは、押しも押されもしない人間であるし、
「宗教と言うより、哲学者」(ユウコ)と思えば、なるほどと思う。それは例えば、天神様、八幡様、弘法様にお参りするのにも似ている。
帰り道すがら「カモシカヤギ」を見る。似たような動物は、新疆でも見たような気がする。
さすがに暑いが、昨日ほどではない。恐らくその理由は、
@昨日は疲れていた
A風呂に入っていないからからだがベトついていた
B暑さになれていなかった
ということだろう。空気はわりと乾燥しているので風が心地よい(少々ほこりっぽい)。
街中を少しブラブラしたあと、部屋に戻ってひと休み。
夕方5時を回ったところで再び外へ出る。
孔雀湖公園には動物がなく、ホテルの向かいから南にのびる曼听路を歩いて曼听公園に行く。
水かけ祭りでは多くの人が集まるというこの公園までは少々歩いたが、孔雀がいっぱいいて楽しい。
檻に囲われた熊狸、豚尾猿、クマなどもいる。
【タイ式舞踊付きレストラン】
ところで曼听路はツーリスティックなタイ舞踏レストランが多く建ち並び、英語の看板も目立つ。客引きも熱心だ。
壁がない小シアター風の店が多く、民族衣装を着て踊る女の子や、お客さんのテーブルも見える。
看板メニューを見るとたいていコース料理が1人60元からと、高い。というより、2人ではとても食べきれない。
とはいえお腹も空いているし、舞踏も少し気になるので、単品でも食べられるという店に入って2,3品を頼んだ。
2人連れの客というのも珍しいのか、あるいはコースを取らないのが珍しいのか、別の円卓を囲んだ中国人団体からは怪訝な顔で見られ、不愉快である。
一方、彼らは踊りも見ずに大いに盛り上がっている。我々のテーブルが貧相にも見えるが、それでもあんなに食べきれない。そして彼らは食べきらず、半分も残して席を立つ。
踊りは、衣装は美しくかわいいが、全体的に大したことはない。団体向けサービスということなのだろう。漢人がタイ音楽にあわせて踊っているのも、やや興ざめである。
じっさい、お客は少ないのだ。それでもユウコは楽しそうにしていたが、あとから聞くと「ムリヤリにでも楽しくしないと、やり切れない」とのことであった。
帰り道、リキシャに乗る。真っ黒に日に焼けた、無駄肉の全くない細い身体のオジサンである。歳は50そこそこといったところか。
「こんなんで大丈夫なのかな」と思ったとき、ふと「深夜特急」の一節を思い出した。
出だしが遅い。「ヨーイトコーラ」と声をかけたくなる。
代わりに運転しようか、あるいは降りて併走しようか。
三輪車の後部席に座り、彼の背中やペダルをハラハラしながら見つつ、しかし
「いや、彼はこれで生計を立てているのだから」
と思い、腹を据えると、やがて慣性がかかり、動きが軽くなってきた。
5元が高いかどうかは考えどころだが、地元の文化に触れたという意味では楽しい。
ところで、最近ユウコは妙なときにボンヤリしている。
ホテルでフロントの話を聞いていなかったり、食堂で勘定するときも、相手の質問を聞いていなかったり、一番シャキッとしなければならないときにボーっとしている。
ダマされるゾーと思う半面、疲れているのではないかと少々気になる。
【ラオスは目の前】
いよいよラオスが近づいてきた。明日は国境のモンラーへ行き、そこで一泊して、翌日には国境を越える。楽しみだ。
10(明日) → モンラーへ
11 ラオス国境を越え、ウドンサイへ
12 ナムパクへ
13 ルアンパバンへ
14(日) ルアンパバン滞在
15 ビエンチャンへ
16 ビエンチャン滞在
17 タイ国境を越え、ノンカイへ。ノンカイから夜行列車でバンコクへ
18 バンコク着
・・・20日頃、帰国予定