1030日(金){88日} シーラーズ 晴れ

 

【アケメネス朝の都から、サファヴィー朝の都へ】

 6時起床。3000とせびるタクシーに2000払って、715分にテルミナルに着く。休日のせいか、あるいは朝のピークを過ぎたせいか、大きなターミナル構内は静かで人も少ない。予約しておいたバスNo.1は、今までの経験からすると最も信頼の置けるバスだが、今日乗る8時発のバスは少々落ち目の車体であった。そう思うと、値段も安めの気がしてくる。客が少ないのでしばらく客引きをしたのち、出発した。

 

我々の隣には母娘が座っている。娘はおとなしくてかわいく、終始ニコニコしている。我々の前には父と末娘が座っている。こちらの娘もかわいらしい。斜め前には医学書を読む若い女性がいる。そして我々の斜めうしろには、双子の娘を連れた親子4人連れのファミリーがいるのだが、この2人がうるさい。車内を前に後ろに歩き回り、2人してキャイキャイ騒いでいる。親はと言うと、父はいっしょになってはしゃいだり、あるいは娘の様子に気も留めず熟睡している。母親だけが「静かにしなさい」と注意をするが、まるで聞かない。イランの父は娘に甘いのか?

 

 昼食休憩時にはチェロモルグとホレーシュを食べた。チェロモルグは要するに鳥とバターライス(とナン)だが、トリの調理は店によって少しずつ異なり、ただ焼いたものが出てくることもあれば、煮たものが出てくることもある。ややシチューっぽいこともある。いずれにせよチェロケパブ(羊)よりは断然うまいと思う。そしてどこへ行っても、ハズレがない。ホレーシュは、これも店により中身が異なるが、要するに煮込みスープである。今日の「大根の葉スープ」と言うべきか、苦みがきいて飲むのに苦労した。

 

【世界の半分の実感まだなし】

 16時。バスはイスファハンの南バスターミナルに到着した。町はずれなので、ここでは世界の半分ぶりは分かるはずもない。バスを降りた目の前に北(町の方向)に向かう市バスの停留所があるので、町を東西に流れるザーヤンデ川に掛かる橋シオセポルまで乗る。ここから宿探しに歩く。イスファハンの旅行人宿といえばアミール・カビール・ホテルが有名だが、だからここには行かない。通りがかったホテル・アリアは2人部屋が20ドルというので高いとごねる。70000リアルまで落ちたが、それでも少し高いので、また探す。疲れているが、頑張って歩き、昨日のカナダ人カップルが泊まったというホテル・ナグシェ・ジャハーンに行ってみた。フロントの料金表には60000とあるが、なぜか50000にまけてくれた。部屋は3階。静かな雰囲気のホテルである。フロントでは英語はほとんど通じないが、なまじ通じるところより、こういうところのほうがなぜか安心する。

 

 イマーム広場をひと回りしに行くと、カーペット屋NOMADの店員に日本語で声をかけられた。「この店は、日本人、みんな知っている」「日本人、だいたいアミールカビールに泊まる」。彼の名はナリマンといった。

 

【サンドイッチ屋でのトラブル】

 サンドイッチ屋で夕食。うまい。いつもザムザムは250mlのビンで出てくるが、ホテルに帰ってからも水がわりに飲みたいのでペットボトルの1.5lを買った。店を出て宿に帰ろうとすると、同じテーブルで目の前に座っていた2人の若者が、我々を呼び止める。英語はほとんど通じない。「どこへ行く?」と聞くので「散歩だ」というと、我々の前に立ちはだかり「金を払え」と言う。「金なら店で払ったよ」と、無視して歩いても付いてくる。不愉快なので話を真面目に聞いてやることにした。それによると、「君たちはさっきペットボトルでザムザムを頼んだが、目の前にいる我々にくれなかった。我々は、君たちが振る舞ってくれるものと思ってザムザムを頼まなかったんだ。それで、喉が渇いて水を飲んで我慢した。だから償いをしろ。10000リアル払え」ということである。思い返すと、僕がペットボトルを頼んだとき、彼らは突如として上機嫌になり、食べていたサンドイッチを平らげたあと、さらに追加注文していた。我々のペットボトルを指さし、なにかゴニョゴニョと話しかけられた。「要らないなら、それをくれないか」と言われた気がする。しかし、これはホテルに持って帰るのだ。それに、彼らにジュースをおごる義理はないと僕らは思っていたし、アテにする彼らの方がとんちんかんと言う他はないが、彼らとすれば、サンドイッチをおかわりしたのはジュース代が浮いたからなのであり、くれないと分かっていれば最初からザムザムを頼んでいた。そしておかわりはしなかった、と言いたいらしい。これが原因なのか、彼らはレジでの精算でもめていた。そして、食後に水道水の蛇口に口を当てて水を飲んでいた。

 

 あとから考えてみるとこういうことになるが、しかし、いちゃもんをつけられては面白くない。「レジに問題があるなら一緒に店に行こう。付いてこい」と強気の態度に出ると、彼らは呆気なく引き下がった。最終的には何もなかったのだが、誤解を招く行動は慎もう。

 

 明日は、イマームの広場にあるツーリストオフィスに行ってみる、インターネットカフェがないか探す、日本に電話をかける、といった行動をとる予定だ。