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119日(月){818日}アルデビル 曇り 風強く、冷たい

 

【サレイン温泉】

 朝はかなり冷える。

強風が吹き、どんよりとした雲が空を覆う中、我々はサレイン温泉ツアーにでかける。

温泉といえば、アルマトィの大浴場、アクスーのサナトリウムと、我々にとっては今まで不遇な目に遭うことが多かったが、ここは「アジア横断」でも強く勧められていることもあるので、さすがに大丈夫だろう、と期待している。湯船につかり、約2ヶ月間のアカをすっかり取り払いたいものだ。

 

宿の前を走るイマームホメイニ通りを南西方向に10分ほど歩くとメイダネ・シャヒド・バホヌールに出る。サレインへ行くサヴァリはここから出る。危うくタクシーの客引きに引っかかりそうになるところを、ミニバスの運転手に引き留めれ「サヴァリはあっちだ」と案内される(親切だ!)。

 

サレインはアルデビルから25km、タブリーズへ向かう街道に沿って、山へ入ったところにある。

ここには大浴場もあるとのことだが、我々は適当に、入り口が男女別々になっているところに、「2時間後に落ちあう」ということにして入ってみた。そこは、言うなれば個人用バスルーム貸し切りスペースであった。

 

入口を入ってすぐに靴を脱ぎ、サンダルに履き替え、目の前のロビーに進む。

ロビーの内装は白塗りで、腰掛けベンチが並んでいる。ロビーから左方向に一本の通路が延びており、その両側には等間隔に扉が、左右各10個ほどついている。これが各人のための温泉ブースなのだ。お客が少ないせいか、「営業中」のブースは数個ほどで、残りの扉は外から鍵がかけられている。

 

僕はフロントにいるTシャツ短パンサンダル姿の2人のオヤジに言われるままロビーのベンチに腰掛け、順番を待つ。2人の店番オヤジは僕にいろいろと話しかけてくるが、いかんせんペルシャ語なのでちっともわからず、僕は身振りで「風呂に入って汗を流したい」ということを告げるのみであった。

30分ほど待たされてブースに通された。扉を開けて中に入ると、広さ3畳ほどの脱衣所がある。荷物は誰にも預けることなく、ここまで持って入ることができ、しかも扉は中から鍵をかけることができるので、セキュリティには問題がない。

脱衣所から洗い場へはとくに仕切はなく、どちらも大理石調の造りになっている。洗い場は広く、12畳は有ろうか。右手は段になっている。そして洗い場の突き当たりに、1人用の白いバスタブが置いてあった。

「さあ、はじめるぞ」とばかり、僕は蛇口をひねり、湯船に湯をためはじめる。お湯が茶色い。鉄の臭いがする。これは・・・温泉だからなのか、それとも水道管の錆なのか。まあいいや。洗えば良いんだから。お湯に浸り、時間をかけてゆっくりとつかる。大浴場では人目を気にしなければならないことを考えると、これは自由な空間が保たれていて快適だ。

充分ふやけたところで猛然と身体を洗う。お湯は2回張り替えた。足の爪の先から、関節のしわのアカまですべて洗い流した。1時間は入っていただろう。さすがに扉の外から店番の声が掛かり、上がった。

ユウコもすっきりしている。お互い、旅の疲れをとり、つるつるぴかぴかであった。ちょうどアルデビルに戻るミニバスが停まっていたので、それに乗って帰る。それにしても今日は寒い。朝から掛かっていた鉛色の雲が、昼過ぎから増えてきた。

 

 街へ戻り、珍しく英字新聞を見つけたので買う。

 

ユウコは温泉で気が抜けたのか「部屋で休みたい」と言うので、僕は1人で街へ出た。

とは言ってもとくに歩く当てもなく、ホテルの前の商店の並びにおしゃれな理容室があるのを見つけ、髪を切ってもらうことにした。洗髪付きで4000リアルとは安い。

床屋のあとは、コートを探しにバザールへ行く。今日の寒さが、これから毎日続くのか、それともこの地方限りの、今日限りのものなのかは定かでないが、いずれ必要になるのだから、ぼちぼち買う気でいる必要がある。しかし、この街に売られるコートはどれも鈍くさくて気に入ったものが見つからなかった。どの店でも同じような物ばかりしか置いてない。今後のこともあるので出来るだけ寒さに強い仕様が求められるが、無い。イスファハンの作業服屋で土方用のコートがあったので「アレなら良いなあ」と思ったのだが、かの地では暑くて買う気も起こらなかった。いずれにせよ、あれを越える品でなければ買う気にはなれない。コートはタブリーズに期待しよう。大きな街だから、もっと良い品があるに違いない。

 

 部屋に戻る。僕の頭を見てユウコが「いかにもイラン人風の髪型になったね」と笑った。髪の生え際が刈り上げでなくて、少々長めに残っているところがそう見えるらしい。寒いのでフロントに頼み、部屋のガスストーブを入れてもらう。

 

 全くどうでもいいことだが、昨日でトルクメニスタンのビザが切れた(入国期限は11/9

 

 ところで新聞に「アメリカ人の団体が観光旅行にイランを訪れた」という記事があった。アメリカ人ツアー客の受け入れは、ホメイニの革命以来、初めて、とのことである。

 

【番外:アブグージュ・ディージーの食べ方】

ディージーは日本の「肉じゃが」と似た料理で、「ジャガイモと羊の壺煮スープ(シチュー)」といったものだが、食べ方はずいぶん異なる。料理は壺で出てくる。まず、壺の中のスープのみを、一緒に出てきたアルミの椀にあけ、これをどっしりしたパンと共に食する。スープを飲み干したあと、そのお椀に、今度は壺の具を出し、専用のコテを使って、お椀の中で具をドシドシとつぶす。コテは真鍮で出来ていることが多く、重い。具はぐしゃぐしゃにつぶれ、さながらコロッケの中身のようになる。つぶした具は、ナンにつけて食べる。このとき付け合わせに、いわば薬味の役割として生タマネギがついてくる。これがよく効いている。また、前半のどっしりパンと、後半の薄ナンとの使い分けがミソとも言える。食後にお茶を1杯いただく。今日入ったディージー屋(オヤジ向けの大衆食堂だ)では、これで12500リアルになるが、周りの人はみなニコニコと我々に親愛の視線を投げかけ、具をつぶすにあたっては店長が自ら教えてくださった。そのうえお茶代をまけてくれた。