イラン5(No.42)マシュハドは聖地だが・・・〜マシュハド
【聖地に到着】
10月22日(晴れ)
マシュハドにやってきた。マシュハドは9世紀に建設されたイマーム=レザー廟を中心に,十二イマーム派の信者の巡礼地として発展した町である。イスラム教の聖地だ。
マシュハドのバスターミナルは、待合室、トイレとも大変きれいで、英語のインフォメーションカウンターなどもあり、(朝早すぎてまだやっていなかったが)なかなか都会的。さすがだな、と思う。
市バスで街に出る。適当にあたりをつけて入った宿は満室で、客引きについて入ったホテルジャバヘリは、スイートを朝食付きで6万リアル(9ドル)にて提供するという。
「あなた方はGuestですし、お国でぜひ、私のホテルを紹介して下さい」とのこと。(そうはいっても、イラン人はもちろん私たちの半額以下で泊まれる。)
ダブルでも同じ値段だというので、スイートにする。豪勢だ。テレビのあるリビングと、寝室の二部屋がある。エアコン付きで、暖房も入っている。少々、豪勢にしすぎの感あり。こんな贅沢していいのだろうか??でも、2人で9ドルだし、いいか、と、自分に言い聞かせる。
【イマーム・レザー廟1回目】
ともかくも、一休みして、イマーム・レザー廟へ。
廟の入り口で、おばあさんに、私は「チャドル!」と厳しく注意された。
頭は隠しているのだが、スカーフでは不十分なようだ。
若い男性は「No problem」と言うが・・・。
心配なので、チャドルをバザールで買う。黒いのが欲しかったが、店の人は私に柄物しか売ってくれない。目立って嫌だなあと思うが、仕方がない。しかも、暑い!ただでさえ、コートを着ていて暑いのに、その上から布を重ね着しなければならないなんて!裾も気になるし、面倒臭い!!変な習慣だ!!!と、腹は立つが、怒っても仕方ないので、神妙にチャドルをして廟の中に入る。
すごい!すごい!!けど、暑い・・・。廟の中心は、銀でびかびかしていて、その周りでお祈りしている人がたくさんいる。廟を前にして、本当に泣いている人もいる。なんだか、異教徒の私には恐れ多くて、奥まで入れない。廟でも男女の入り口が別なので、別行動をしていたマサトは、奥まで入ったという。
イマーム・レザー廟は夜のライトアップが素晴らしいというので、もう一度夜にも訪れるつもりだ。私も夜には入ってみようか・・・、と思う。
聖廟自体は、モザイクが今まで見たどのモスクよりも素晴らしく、そして、広い!
サマルカンドのレギスタンも素晴らしかったが、ここは「本家の貫禄」というか、修復もこまめに行われているようで、壊れているところも少なく、美しい。
ウズベキスタンは、宗教弾圧のあったソ連時代があったがために、ここまでの域に至っていないのだろう。もちろん、マサトがいうように、「ウズベキスタンは田舎だから」という理由もあるかもしれないが。
敷地内には博物館もある。地下がなぜか切手博物館になっていて、これでもかと大量の切手が展示されている。イランの博物館はとにかく展示物の点数が異様に多い。日本の切手も展示してあって、なぜか沖縄海洋博の記念切手が展示されている。
スペインのコペルニクスが印刷された切手や、アメリカやなぜかイランでも発行されている、「月への第一歩」をデザインした切手などが面白かった。
敷地内には図書館もある。ここでも、入り口は男女別。中でも男女の席は区切られているようだ。
「男と女は違う」というイランの教育。「外国人とイラン人は違う」というイランの教育。これが現実?
「人間は皆平等です」という日本の建前教育。建前教育で育った私に、イランは窮屈・・・か???
【マシュハドのバザール】
マシュハドの大バザール、バザール・レザーに行ってみる。
礼拝記念グッズ+乾物セット屋(数珠・香水・お祈り用の石・砂糖菓子・サフラン・干しザクロのセット)、数珠屋、宝石屋、おもちゃ屋、服屋の繰り返し。
日本では高価な香料、サフランが欲しいが、帰るまでにだめになってしまうかもしれないし、残念。日本料理では使わないしね・・・。と自分を慰める。
マサトは冷やかしで「何かホメイニグッズを買おう」と楽しみにしていたようだが、ホメイニグッズは品数が少なく、気に入ったものがなくてがっかり。時代が変化している証拠だろうか。
ホテルと同じ通り沿いにある、タバカ屋で鶏を食べる。タバカはイランでもおいしい。
【イマーム・レザー廟2回目:聖地なのにスリ!!!】
歩き回って疲れたので、一旦休憩して、夜のイマームレザー廟へ。
あまりにびかびかのライトアップはどういうべきか・・・。夜であるが、明日は金曜日で安息日ということもあり、すごい人出だ。
もう一度廟に入ってみる。こんどこそ、ご本尊を・・・と思い、近づいてみるが、人が多すぎるので、戻ろうとすると、私の手をつかむ人あり。
つかんでいる方と反対の手で私の財布を触っているようだが、気のせいかな?と思っていると、どんどんと人混みの激しい方へ私を押す。しかも、片手で私をつかみ、もう一方の手で財布を捜している・・・と再び思ってよく見たら、2人がかりで私を挟んでスリをやっているようだ!私が出口のほうへ逃げても追ってくる。とうとう、両手をつかまれ、財布が半分、ポケットから出される。腕を振りきり、
「ナ!(ペルシャ語でNo!の意味)」と叫んで、にらむ。
しかし、やつらはひるまない。出口までなんとか逃げてきても、人混みのほうへ引き戻そうとする。さらに、よく見ると、スリは3人だ!バアサン、オバサン、小娘。家族ぐるみか?
「奥が見たいんだろ?」と私を引っ張る。
「ナー!」と叫ぶ私。さらに人が少ないところへ逃げる。
ここは、マサトとの待ち合わせの場所だ。マサト、早く来て!!
「奥が見たいんじゃないの??」と小娘がまた近寄ってくる。
「ナー、ナー!!」小娘を振りきると、
バアサンが何かの布の切れ端を持ってきて、目の前にぶら下げる。
「買え!!」と迫っているようだ。
私は更に逃げる。マサト、早く戻って来てよ〜!!!
やっと、マサトが見学から戻って来た。
一刻も早く、ここを出たい。
しかし、チャドルをしているせいで、顔色がわからないからか、マサトはあまり私の恐怖を分かっていない様子。
恐怖で言葉もあまり出てこないが、「悪いけど、とにかく帰ろう。」とマサトを促す。
しかし、聖廟で泥棒するなんて、地獄に堕ちるぞ。
それとも、異教徒なのに聖域に闖入した、我々が悪いだろうか。
「イラン良い国」などと油断していると、こういうことにあう。
ここは外国外国。
気分を落ち着けるため、バザールレザー近くの交差点のジューススタンドで、メロンジュースやバナナセーキをのむ。マサトの頼んだバナナセーキのほうがおいしい。シュークリームも買う。マサトもすっかり甘党だ。