イラン9(No.46)世界の半分〜イスファハン1

 

【インネン】

1030日(晴れ)

イスファハンへ。朝、バスターミナルまでいつものようにサヴァリを利用した。運転手は片言の英語を話し、陽気であるが、運賃を3000リアルとぼる!

No.1のバスはぼろいが、一番安い会社のバスを選んだので仕方がない。乗客には子ども連れ多し。おとなしい姉妹(途中で降りた)、失礼な双子、どちらも女の子。どんな子供であれ、子供は無条件にかわいい。

昼食休憩のレストランでまだ食べたことのない、イラン料理「ホレーシュ」を注文すると、豆と青菜と肉のスープが出てきた。葉っぱが苦く、決して美味しいとは言えないが、日本のどこかで食べたことある味がする。そうだ、カブの葉の煮物だ!そうと思えば、まずくもなく思えてきた。

バス会社のクルーに気象会社でお世話になったIさんに似た人がいた。

イスファハンへは8時間で到着。南バスターミナルからは、イスファハン大学経由、シオ・セ・ポル行きのバスがある。

まずは宿探しだ。ダブルで6万リアルとガイドブックにあるホテルアリアへ行くが、フロントでダブルで15ドル、ディスカウントしても7万リアルと言われ、相当の値上がり。昨日会ったカナダの人が泊まっていたという、ナグシェジャハンホテルへ移動する。フロントの人はにっこりと6万リアルを5万リアルにディスカウントしてくれた。快適な部屋である。

ここイスファハンにある「イマームの広場」は「世界の半分」と言われた美しい場所だそうで、ヤズドで会ったもと海軍兵士の運転手さんも、昨日のカナダ人も大絶賛していた。楽しみだ。もう暗くなってきたが、明日まで待ちきれなくて「イマームの広場」を見学に行く。残念ながらライトアップされていないので「世界の半分ぶり」がよくわからない。今日は金曜日のせいか、広場では暗い中でも人々が憩っている。本当の感激は明日のお楽しみということで、食事に行く。

適当に入ったサンドイッチ屋だが、とてもおいしい。テレビではサッカーが放映されていて、偶然日本が試合をしている。2人でサンドイッチとテレビを楽しんでいると、前に若い男の2人組が座ってきた。ふつう、サンドイッチ屋では小さい瓶のザムザムを買って飲むのだが、「どうせホテルでも飲むから」とマサトは1.5リットルのペットボトルを注文して買っていた。男達に飲物はない。彼らは英語を話せないのだが「日本人か?」などと言いながら私たちにペットボトルのジュースをついで回る。どうも彼らの本当の目的は自分たちもジュースにありつきたかったということのようで、(少しあげても良かったのだが)断ると、突然態度を翻して、洗面所の水をあてつけがましくがぶ飲みし、店員にくってかかっている。あまり関わり合いになりたくないし、私たちも食事が済んだので、会計して外に出た。しばらく歩いていると、さっきの男達が後を付けてくる。そして、マサトの持っているペットボトルを指さし、1万リアル札を出して、よくわからないが、身振り手振りで「お前達のジュース代を俺達は払った。1万リアルだ。だからそのぶんを返せ。」といっているらしい。しかし、マサトはちゃんと自分の分の支払いは済ませているし、だいたいジュースが1万リアルもするわけはないのでおかしな話だ。まあ、要は自分たちがジュースをもらえなかったもので頭にきたのだろう、なんだか知らないが私たちに因縁をつけているのだ。相手にしないでいると、「おまえたちのホテルはどこだ」とか言いながら、いつまでも後をつけてくる。あまりにしつこいので「OK。さっきの店に戻って店長と話をしよう」といって店の方に戻ろうとすると、「いいよ、いいよ」とやっと引き下がった。なんと幼稚なカツアゲ。おそろしいというよりあきれてしまった。これからは目立った行動をとるのはやめようねと話す。

気を取り直して、菓子屋でケーキを買って帰る。

しかし、さもしいというのなら、「物価の安い国」を選んで、それを旅の基準にして旅行すること、そのもの自体がさもしいことなのではないか?私たちは金持ちだ。けれど、金持ちがイランのサンドイッチ屋で安いサンドイッチを食べることは悪か?1万リアルという、イラン人にとっては大金を簡単に請求されてしまうガイジンとは、そういうものなのだろうか。

 

【さすが、世界の半分】

1031日(晴れ)

イマームの広場にて「世界の半分」ぶりを満喫。特に「王のモスク」はふたりとも口をポカーンとあけたままぼんやりしてしまうくらいすごい。あまりの美しさに、見ていると泣けてくる。ドーム中央の天井にあるタイルワークがこれまた美しい。ドーム中央は素晴らしいタイルワークと同時に、すばらしいエコーのかかる場所である。1周しても立ち去りがたく、2周する。3周、4周してもよい位だ!「王のモスク」の素晴らしさに触れてしまうと、マスジェデ・シェイク・ロトフォラー(イマームの広場東側のモスク)やアリ・カプ宮殿はこぢんまりしていて、感動が薄くなってしまうくらいだ。しかし、よく見ようと目をこらしてみる。すると、アリ・カプ宮殿の絵やモザイクは少々中国的で面白い。宮殿の6階にある飾り棚も面白かった。

イマームの広場内にあるTourist Informationは、今日は休み。

電話局へ行き、マサトの父と話す。「娘の声を聞かせてくれ」と言ってるよ、とマサトから受話器を渡され、私を娘扱いにしてくださったのが、うれしかった。

闇両替もする。この両替人は今までで最もレートが良く、お金もごまかさない。

ふたたびイマームの広場に戻り、私は土産物屋の美しさに耐えきれず、更紗を買った。

イマームの広場入り口付近の2階にあるチャイハネでチャイを飲む。2人で2000リアル(クッキーなどお菓子付き)。先日、ケルマンでは2000リアルのチャイに「えー、高いよ」と思い、中に入らなかったが、お父さんに「貯金残高がまだある」と電話で聞いて、マサトは気が大きくなっているのだろうか?このチャイハネ、2階に上がっただけでもなかなか眺望が良い。

チャイハネを出ると、広場の名物、NOMAD(絨毯屋)の店主、ナリマン氏に「うちでお茶を」と誘われる。日本語ペラペラのナリマン氏は日本人観光客に人気者だ。しかし、警戒心の強い私たちがなかなか誘いに乗らないためか、今日は勧誘ではなく、「この日本からの手紙を読んで欲しいのです。しかし、私は日本語が読めないので・・・」と困っている様子を見せた。信じた私たちは店に入り、手紙をゆっくりと音読してあげたが、よく考えればこのことが店に入らせるための手段だったのかもしれない。そんなわけでまんまと術中にはまり、更紗工房へ連れて行かれた。

ここで働いているおじさんはNHKの「シルクロード」でも紹介されたという職人で、品物も先ほど広場で購入した更紗より確かに生地が良くて美しい。ナリマン氏がその「シルクロード」の本を私たちに読ませるのだが、かれが商売上手だなあと思うのは、その本の中で職人が「一番嬉しいことは何ですか」と聞かれていて「私の作った更紗が高く売れたときです。」と答える部分があり、その1節に赤線が引かれていることだ。そしてナリマン氏は「手作りである」こと、「発色がよい」こと、「おじさんは人間国宝級の職人」ということを強調する。あまりの更紗の美しさに、このあと私たちは1枚買ったのだが、この1節を読んだことで、どうも値切りにくくなってしまった。お金を払ったらおまけをつけてくれたので、倍以上の値段で買ってしまったのかもしれない。しかし、確かにものは素晴らしいので、イランだけに旅行に来て、すぐに日本に帰るのだったら、多少ぼられたとしても、おもいっきり買い占めて帰るだろうと思った。

夕方、チャウビー橋のチャイハネに行く。とても感じの良い店で、店中美しい更紗とカーペットで飾られている。私たちはチャイしか頼まなかったが、水パイプをゆっくりとくゆらせている人々が多く見られる。水パイプは女性でもすっている。今までイランではチャイを飲むとき角砂糖をなめながら飲んだものだが、ここイスファハンではべっこうあめの薄いものをお砂糖代わりになめる。このべっこうあめが、けっこうおいしい。私はお茶と関係なくばりばりと飴を食べた。虫歯になりそうだ・・・。

夕飯はナグシェジャハンホテル隣のノバハールレストランで、ニジマスのフライを食べた。魚は高いけどおいしい・・・。今日は豪遊だ!!やっぱり気が大きくなっているのかも?

夕食後、道を歩いていると、バム・シラーズで会ったバーテンSB氏にまた会った!!あいかわらず感じのいい人だ。Sという姓の人は感じの良い人が多い。彼は名古屋のロフトの近所にあるバーで働いているという。今日はもう食事も済ませていたので、一緒に食事でもしたかったのに残念だったが、思わず「日本でもお互い近くに来たら飲みましょうね!」と言ってしまうナイスガイだ。

 

(つづく)