1月21日(木)ヴィリニュス着 霧のち曇り
【国境を越え、リトアニアの首都ヴィリニュスへ】
ポーランドの港湾都市グダンスクから乗った大型バスのお客は10人ほどである。
朝4時25分、国境を越えることは分かっていたのに、心の準備を全くしていないまま、国境に着いた。
ポーランド出国手続きの後、ゲートを越えて、すぐにリトアニア入国手続き。全てあっけない。
ここはポーランド側のゲートで、しばらく走るとリトアニア側のゲートが現れるのだが、ポーランド側で両国の審査が行われた。
停車は5分。4時半出発。時差はないようだ。
そして、7時15分にはヴィリニュスのバスターミナルに到着してしまった。
本当に逃げ出したいほどにイヤなことが続いたポーランド滞在であったが、気が抜けるほどにあっけなく脱した。予定より1時間も早い到着である。
【ユースホステルを探す】
バスターミナルは両替レートが悪い。これはどこの国でも共通しているが、レートを確認すると、固定相場で頑張っているためか、3年前の値(ガイドの情報)と同じである。
「この調子ではどこで両替しても同じだろう」と判断して、当座の生活資金を両替した。
バスターミナルから3分ほど坂道を上がると鉄道の駅があり、その前に平屋のマクドナルドが営業している。バスターミナルでは息がつけないし、お腹が空いたのと休憩をかねてマクドナルドに入る。明るい店内。朝のさわやかな笑顔。見慣れたメニュー。そしてFish Macがうまい。
ユウコに荷物番を頼んで駅周辺を歩いてみるが、この辺りではVilnius in your pocketは手に入らなかった。これはリトアニアで発行している英語の観光&プレイガイドブックで、情報量が多く、評価が高いものだが、残念だ。
そこで、「歩き方」の地図を片手にYH情報センターに行ってみる。が、ビルは閑散としている。「おかしいな」と首を傾げていると、掃除のオバチャンらしき女性が現れた。
「YHセンターはここにはないよ! フィラレタイに行きなさい」と、優しく元気に教えてくれる。
ビルを出ようとしたところで今度はジイサンに話しかけられ、聞いてもいないのに、「YHか? それならフィラレタイだ」と、同じことを教えられる。
おおー、リトアニア人は親切だ。
「フィラレタイ」とはユースホステルのある場所のことで、これも「歩き方」に出ている。YH情報センターもそっちに移ったということだ。歩いていくのは距離がある。駅の前から市バスに乗ろうとしたところで、電柱の看板が目に入った。
「国際ユースホステル。ここから300m」。
試しに行ってみることにした。普通の家屋のような建物の扉を開けると、親切な青年が英語で応対してくれた。
残念ながらここにはドミの部屋が一室あるのみで、値段は安いし場所もいいが、やはりフィラレタイに行くことにした。駅前の券売でバス券を買い、バス34番に乗り込む。
バスが動き出すとすぐにモギリのオバチャンが我々の切符を回収に来る。ところが僕が2人分のチケットを出したところで、オバチャンはとまどった表情を見せた。
ヴィリニュスのバスは普通のバス(オトバス)とトラムがあって、値段は一緒なのだが券が違う。僕はそれを知っていたので、券売ではっきりと「オトバス」と言ったつもりだったが、手にしていたのはトロリバス用のチケットだったらしい。
「これはしくじった。二重払いになるな」と覚悟したそのとき、オバチャンは「まぁ、いいわ」と見逃してくれた。
フィラレタイのバス停を降り、バスの走る街道を外れて坂道を5分ほど下るとフィラレタイYHがある。2階建ての質素な建物である。フロントのオネエサンは明るく愛想が良い。2人部屋が1泊1人35リタス。2泊目から29リタスになる。1ドルが3.98リタスなので、100円が350リタスと考えて、1人1000円程度。オフシーズンのせいか、お客は全くと言っていいほどいないらしい。
「2段ベッドが2つ並んだ、広い4人部屋を使って良いよ」と言う。しかも料金は6-8人部屋の値段(1泊目29リタス、2泊目以降24リタス)と、頼んでもいないのにディスカウントしてくれた。
ただし、「あなたがたの部屋は別館よ」と、隣の建物を案内される。別館は、廊下が少々スメリングだが、良しとする。シャワー、トイレは共同だが、ほかに泊まり客はいないようなので、貸し切りだ。YHのフロントで、難なくVilnius in your pocket を入手できた。
【いよいよロシアビザだ】
旧市街を経由し、ゲディミノ・ツアーなる旅行代理店に行く。このさき問題となるのはロシアビザだが、気になるなら、取れるところで早いうちに取った方が良い、というわけである。ここは住所が変わっておらず、安心した。
英語を話す、金髪をショートカットにしたかわいい女性が応対してくれる。
「ロシアのビザを取りたい」と言うと、いったん奥に引っ込んで、別のオバチャンと共に現れた。オバチャンはロシア語しか話せない。ショートの子は通訳というわけである。
オバチャン、開口一番、「その気になれば明日にでもビザは取れます」と言う。
「明日でも取れます?!」。
我々は言葉が出ない。「1週間も10日もかかるのではないか」と気をもんできたのがアホらしい。我々の心配事を、よくもあっさりと消し去ってくれたものだ。話が続く。
「もちろん、来週でも良いですけど。いつ欲しいですか?」。
いままでビザに関しては半ば強制的な待ち時間を経験していただけに、「いつ欲しいですか?」の質問は我々を困惑させた。
「早ければ早いほうが・・・しかし、料金にも依ります」。
すると彼女が続ける。当然の事ながら、この店のビザ申請代行サービスは地元民向けのものなので、日本人の料金は申請してみないと分からない。
「だけど、先週だったかしら、カナダ人は翌日発行で100ドルだったのよ。だから、それ以上はかからないと思いますよ」
「パスポートを預ける必要がありますか? 我々はラトヴィアのビザも取らなければなりませんので・・・」と聞くと、
「パスポートは今日預かっても明日の午後2時以降には返せます」との答えだ。
善は急げで、今日申請することにした。それで明日には一旦パスポートが返ってくるから、土日休んで、ラトヴィア大使館には月曜日に行けばよい。そういうわけで、火曜日にビザが取れるように手配をお願いする。
「いくらか分からないけど、料金を立て替えるわけにはいかないので」と言うので、多めに1人100ドルと見込んで、パスポートと写真3枚と共に200ドルを預けた。
【いやぁー、リトアニアって】
それにしても、リトアニア人は親切だ。そして、あれほど心配していたロシアビザが「カンタンよ! 明日でも良いわよ!」とは、涙がちょちょ切れそうだ。
あんまり嬉しいので2人で乾杯をしに、pocketオススメのCafé CABAREへ行く。
Goodスープ、goodチキン。そしてスーパーgoodビール。
「かーっ! うめー!! ビールって、美味いねえ!!!」 ホントに泣けてくる。
そしてインターネットをしに行った。知人に先日もらったメールの返事を書く。
さっき食べたばかりなのに、なんだかまたお腹が減ってきたので、今度もpocketオススメ、カフェテリア方式のカフェKUBAに行く。
明るいお店。おしゃれな人々。若者は男女ともスラリと背が高い。
店員さんは愛想が良い。笑顔がまぶしい。元気な英語で声をかけてくる。しかも料理はうまい。そして物価は思っていたより安い。非の打ち所がない!! 良い国だー。
ビールを飲みながらpocketを読むが、情報満載だ。すばらしい。地図も見やすく、正確である。すべからく、ガイドブックはかくあるべきだ。でたらめな地図なら、ない方がよい。
さて、そのpocketによると、リトアニアは98年4月からヨーロッパ中央帯と同じ時間帯を採用したとのことである。それでポーランドとの時差が無くなったのだが、これは遠くフランスやスペインとも同じ時間帯であることを意味する。そもそもグリニッジ+2の従来の時間帯はソビエト時代の「強制」であり、こんどの改制によって西側ヨーロッパの一員となった象徴としたいような雰囲気だが、地理的にはちょっと無理があるように思う。ちなみにラトヴィアとエストニアはグリニッジ+2で従来通りである。
マーケットに行く。しばらく見ていなかったBAVARIAやEFESのビール、そしてカザフスタン以来目にしていなかった白クマラベルのBEAR BEERを発見した。キリル文字の缶詰もある。そういえば、ポーランドではペリメニが冷凍食品として売られていたことを思い出した。なんとなく、ロシア的世界に「戻ってきたー」という気分になる。ロシアが近い。そしてIKRAもあった!
1ドル=110.98円(98年1月21日)。かなり円高になってきた。どういうことだ?