916日(水)ビシュケク 晴れ

 早朝、パンフィロフ公園でリスを見かけた。蝦夷リスに似ている。

 

【ビシュケクでの呑気な一日】

 昨日の夕食はビシュケク市街の、初日にも御世話になったレストランで取る。ここの料理は安いわりにおいしいし、ロシア料理なので羊が出てくる心配もなく、安心だ。店長である婦人の片言な英語と、僕の片言なロシア語とで料理の注文を取る。

 ビシュケクの中心を東西に走る繁華街のチューイ通り、街の中心から少し西に歩いた北側に「フィルハーモニア」と呼ばれる大ホールがある。フィルハーモニアの対面、チューイ通りの南側にハンバーガースタンドやホットドッグの露店が多く並ぶのだが、とくにパンフィロフ公園より西にはうまい店が多く、地元民にも人気がある。とくにそのうちの一つは地元の若者にとても人気がある。たしかにこの店のホットドッグは、ほかに比べて味が良い。キャベツとニンジンを千切りにした「サラダ」をたっぷりと挟んでくれるので、生野菜を食べる機会がなかなかない我々にとってはありがたい。この近所にはレストランもあって、一見するとファストフードなのだがやはりレストランで、ロシア料理が中心の店だが、安くて美味しい。とくにガルショーチケはたまらぬうまさだ。15ドル以下で腹いっぱいのトルコ料理屋を教えてくれたサムにも教えたい。

 商店街でビールを買うと、レーベンブロイが新疆碑酒と同じ値段なので驚いた。もっともそのレーベンはおそらく中国からの流入品なのであろう。瓶が物語っている。

 

 「ペリメニを食べたいね」とユウコが言う。ペリメニとは、簡単に言えば「ロシア風水餃子」であり、コンソメスープに小ぶりの餃子が入って出てくるのが一般的のようだ。ロシア人だけでなく、現地の人々も食べている。そこで、街中の大衆食堂で食べたのだが、中の具が羊肉であったためクサミがきつく、楽しみにしていたユウコは半分も食べられなかった。隣のキルギス人客はうまそうに食べているのに、残念だ。

口直しに沿道の立ち売りハンバーガーを食べる。これはうまい。およそ、ビシュケクの立ち売りハンバーガーはどこでもうまい。きざみ野菜やピクルスの量などに店の差がある。

繁華街にあるツム・デパートの近辺にはキオスクも並立していて、この辺りは物乞いがいるなど、若干治安には注意を要する地域だが、店の並びの中に酒屋があり、見るとキルギスコニャックが置いてある。キルギスコニャックは、アルマトイでお世話になったバーバリャーナ特選の「うまい酒」である。そのうまい酒は750ml入りで、50スムと55スムとがある。前者は「スタンダード」、後者は「プレミア」と書いてある。プレミアでも300円程度なのだから安いものだ。試しにこれを買う。つまみはビジネスセンター近くにある遊園地の露店で買う。プリングルスが55(コニャックと同じ値段である)、ドイツからの輸入品スナックが25、そして露店のバアサン特製と思われるチップスが9。自家製は安い。しかし、油分が多く、しっけていて、味わいも安い。

 

 キルギスコニャックは、さすがバーバお勧めとあってうまい。オイルサーディンやパンがよく合う。2人で簡単に1本空けてしまった。部屋が広いせいか、気も大きくなっているのだろう。久しぶりに2人してへべれけに酔っぱらった。

酔っぱらい同士の話の中で、ユウコが「日本人に会うとストレスを感じるのはなぜだろうね」と言う。それは僕も常々思っていたことで、「ルーマニアひとり旅」の中でも少し触れている。旅行者の全てがそうだとは言わないが、同じ思いの日本人は多いのではないかと思う。だから日本人旅行者同士で挨拶ができないのだと思う。カラコルでヴァレンティン氏に「日本人がほかにもいるぞ」と聞いたとき、なぜかドキッとした。なぜなのか。これは旅を続ける上での一つのテーマである。

 「見えない大国主義」を持つ日本。まるで浸透しない外国語教育。他国の歴史観を認識しない浅はかさ。もはやアメリカの属国と言われても仕方なく、また、国によってはそう思われている。しかし属国にはなりきれていない。自分の位置を何処に見定め、他国との関係を如何に気づいていくのか。これは危機感の欠如に起因する問題である。日本は、多くの意味で発展途上国だと思う。意味のない外国語教育は、その典型ではないだろうか・・・