ルーマニア6(No.68)ルーマニアのクリスマス2〜シゲット・マルマツィエイ

【教会巡り】

1226日(くもり)

今日はクリスマス2日目。朝食はめだまやき、チェリージャム、バター、パン、コーヒーとアップルティー。

待ち合わせ場所ではすぐにダナに会えた。街のシンポジウムに行くが、研究者向けで、私たちには場違いな感じ。ダナがマラムレシュ博物館を案内してくれる。1階はイコンの展示。2階は民族衣装や農具等の展示。タペストリーや花嫁衣装はもちろん、タオルに至るまでこの地方独特の織物が美しい。ダナは一つ一つの展示品についていろいろと説明をしてくれるが、必ず最後には「でも、よくわかんないの。わたしは街に住んでいるから。」という。その言い方に、少し誇らしい様子も見受けられた。シゲットはマラムレシュでは都会といえ、ダナのうちも農家ではないので、「街に住んでいる」というのは一つのステイタスなのだろうか。たぶん、「都会っ子だから農家のことはよくわからないの」ということを説明したかっただけだと思うが。

その後、昨日行ったのとは別のもう一つのルーマニア正教の教会に案内してくれる。お祈りの時間中で、荘厳な感じだ。「前へ行く?」とか、「お祈りしに行く?」とダナが気遣ってくれるが、信者ではない私たちには、はたまた場違いな感じがして断った。その後カトリックの教会を見る。ここは朝10時までがお祈りの時間で、もう既に閉まっていたが、ガラス越しに中の様子が見られた。内装はロココ調。オルガンがあり、壁画は印象画風。日本にある教会のように、椅子がある(ルーマニア正教会の多くには椅子がない。あっても部屋の端にある。)

自分の通っている教会にお祈りに行きたいというダナと別れ、別のロシア教会に行くが、閉まっていた。

1時にシンポジウム会場から(昨日自分たちで行ってみて閉まっていた)シゲット郊外にある民俗博物館へのバスが出るとのことで、会場に行ってみるが、やっぱりどうも場違いな感じ。役員の初老の男性が「今年作ったんだよ」と立派なマラムレシュの英語ガイドブックをくれた。「これからエキジビションなんだ。マラムレシュ博物館で行うんだよ」とのことで、バスは、博物館を見た後か、と、再び博物館へ戻り、イコンや彫刻などを見学する。見学後もひとびとについていくと私たちが宿泊しているホテルティサに戻ってきた。今後の予定を聞くと「民俗博物館には行かないよ」とのこと。シンポジウムに参加している人たちは、これからこのホテルでお昼ご飯とのことで、私たちはダナの家へ行く。

迎えに来てくれたダナは家への途中、「私たちはクリスマスや新年、イースターの前には卵や肉を食べないの。あと、水曜日はユダの裏切りの日、金曜日はキリストの亡くなった日だから、その日も節食するのよ。」という。まるで、イスラム教のラマダンみたいだ!やっぱりルーマニア正教はイスラム教と同じなんじゃないか!?と思う。

ダナ家での昼食は、日本のおせち料理よろしく、今日も昨日と同じメニューだが、大変おいしい。ホットワインもいただく。お姉さんのモナ、お母さんのミカが今日も大歓迎してくれた。

食事の後、私たちは村の人たちの発表会(コンサート)へ行くといった。ダナは教会へ行くという。ミカをコンサートに誘ったが、「田舎の歌は聞き飽きたわ」と興味なさそうだった。コンサートは明日のお祭りの前夜祭のようで、いくつかの村の聖歌隊の発表会と表彰、フォークミュージックのコンサートが行われた。男性歌手が出てきたが、天然でエコーがかかっているような声をしていて、すごい。バドゥルイゼイという村の人々の踊りの音楽は、若干「阿波踊り」に似ていた。民族衣装はやはりかわいい。聖歌隊の発表では昨日聞いた教会の聖歌隊と、カトリックの人々のものが素晴らしかった。

 

【クリスマスフェスティバル開幕!】1

227日(くもり)

朝食会場のホテルティサは大混雑。やはりお祭り当日は賑やかさも違う。今日は朝食にストロベリーティーが出た。しかし、お茶がでたきり、メインディッシュがいつになっても来ない。急な混みようで皿が足りないのだろうか?他の人も待たされているらしい。しばらくして目玉焼きに粉チーズをかけたものがやっと出てきた。材料もいちおう間に合っていたらしい。

フェスティバルへ。昨日、ここが舞台になるのだろうと思っていたやぐらが、ホテルティサも面しているシゲットのメインストリートに設営されていたのだが、それは舞台ではなく、ツアー客用の特別観覧席だった!メインストリートには、はやくもたくさんの人が繰り出していて、警官がロープを張って、見物客を整理している。そのロープとロープの間にできた小道を

「おらおら、これから祭りがはじまるでぇー、場所、開けんかい!」

とばかりに、民族衣装に身を包んだ少年達が、馬に乗って何度も何度も往復する。民族衣装も美しいが、馬も伝統的な飾りをつけてもらっており、きれいだ。私たちは見物の列に入るのに少々出遅れたので、私は背の高いルーマニア人の後ろになってしまい「見えないなあ」と思っていたのだが、ふと気がつくと、マサトがいなくなっていた。辺りを捜してみると、マサトはなんとちゃっかり報道席に陣取っている。私も便乗し、その特等席へ。図々しいと怒られるどころか、珍しい東洋人がそこにいることを、かえって歓迎されている様子である。

フェスティバルが始まった。村ごとの単位でメインストリートを練り歩き、中央で歌やダンスを披露する。いわばパレードだ。大変かわいい民族衣装、そして、美しい旋律の歌。子どもが参加している村は、よりかわいさが増している。子どものダンスの愛らしさといったら、言葉ではなんとも表現できないくらいだ。あえて言うなら、お人形さんがオルゴールに合わせてくるくる回っているかのよう。各村々で特色をだそうとしているらしく、パンを手に踊る村あり、動物のマスクをかぶった人あり、教会のミニチュアをつくって持ってくる人あり・・・見ていて飽きない。披露される歌として、人気のある歌は「Open to the Christmas door」だ。いくつもの村がパフォーマンスを繰り広げたが、中でもなんとも素晴らしかったのが、トリを勤めたスチャヴァのパフォーマンスだ。パレードのいろいろな場面をたくさんの写真におさめた。

フェスティバル終了後、私は風邪気味で、一旦部屋へ戻る。

その後、川に散歩に行く。川が凍っているので、川でスケートをする人(若者や親子連れ)がいる!日本では「川が凍る」というのも滅多にないことなのに、その上で「スケートの練習をしている」のだから驚く。というかこちらとしては「スケート靴などで滑って、氷がぶちわれて川に落ちるんじゃないか」とちょっとひやひやしまうが、そんなことはない。かなり氷が厚いようだ。

17時前にダナに会うと、

「今日はカトリック教会でもコンサートがあるけど、行く?」と聞かれる。「

もちろん、行きたい!」と私たちは2人とも大喜び。

カトリックの教会は主にハンガリー系住民が信者だという。カトリック教会でのコンサートは、賛美歌のコンサートというより、フォーク・ポップス系ライブのノリ。パイプオルガンに加え、ギターなどの楽器をつかって演奏している。ジョン・レノンの曲も演奏した。

18時からは再びルーマニア正教の教会へ。40歳〜60歳台の人たちのコーラスだという。こちらはアカペラである。

教会でのコンサートが終了し、ダナの家へ。今日は手土産を持ってきた。母のミカにホテルティサの前で売っていた花束を渡す。ダナにはカードを渡した。ミカは、今夜のディナーにルーマニア伝統の主食、ママリガ(とうもろこしの粉で作ったそばがきのようなもの)とおかゆ、ポークステーキを作ってくれていた!

「昨日『明日はお母さんが特別なものをつくってくれるから、絶対来てね』と言ったのは、このおかゆのことだったのよ!お米がなつかしいでしょう。」

とダナが言う。優しい心遣いに涙がでそうだ。食事しながら皆でおしゃべり。近所のおばさんも遊びに来て、話に加わる。

ダナ一家は「私たちをルーマニアのお母さんと妹だと思ってね」という。うれしいことだ。

次回はもっとルーマニア語を話せるようになって来よう、と誓う。姉のモナは23歳で、実は結婚しているらしい。

「子どもは欲しいけど、お金がないの」といわれて、なんと返答したらよいものやら、困った。

このクリスマス休みの間だけ、夫と離れて暮らしているらしい。ダナの誕生日は123日、ミカの誕生日は1215日、(マサトと一日ちがい!)で二人とも12月生まれだ。マサトと私の父も12月うまれだというと、ダナたちは喜んだ。

今日、ダナは離れて暮らす父に会いに行ったという。しかも、コンサート会場でも父親の姿は見かけていたそうだ。しかし、声はかけなかったという。新しい奥さんと一緒にいたからだろうか。声をかけられないのだろう。つらいことである。

ところで、ダナ家ではこれまで何人かの日本人を家に招待しているが、その1人、ヨーコはダナに「ツボ」の話をしたらしい。「ツボ」といっても、宗教じみた悪徳商法のことではなく、東洋医学の「ツボ治療」のことだ。

「日本人はツボに詳しいんでしょう。教えて」とダナに言われて、困った。私が知っているのは人差し指と親指の間のツボを刺激すると、肩こりに効くというくらいである。

ダナは「これはお腹に効くのよね」と言って、親指の下のふっくらしたところを刺激する仕草を見せた。

母ミカは手相を見るらしく、私たちの手相を見てくれた。手相によると、私は年を取るほどに忙しくなる人生らしい。また、ルーマニア人と日本人の手相(しわの形)は相当違うらしい。

「おもしろいしわをしているわねえ」と、ミカはたいそう驚いていた。

明日、私たちは朝早くシゲットを発ってしまうので、今日でダナ一家ともお別れだ。ここでの滞在を本当に楽しく、感動したものにしてくれた、ダナ一家に感謝、感謝だ。

 

(つづく)